部長挨拶

                          薬剤部長 松原 和夫 

 生まれてから薬を全く服用したことがないという人は、まずいないでしょう。反対に、或る一定の年齢を越える方々にとっては、薬は毎日欠かせないものといえます。くすりの語源は、「奇(く)すしき力を発揮することから、くすりというようになった」と伝えられています(出雲大社の古文書)。この話し言葉の「くすり」に、大陸から伝わった漢字の「薬」を当てています。当時の薬は、草木を主体とするいわゆる漢方医学であったため、草木(草冠)によって体の調子が良くなる(楽になる)意味を持つ「薬」を当てたのだと思います。一方、漢字の本家本元である中国では、「くすり」を意味する漢字は「葯」を用います。昔使っていた「藥」を簡略化するために発音の同じ「葯」を当てたのですが、見方を変えれば、草木に、調合や使い方などの「約束事」があって初めて、病気を直す「くすり」となると解釈できます。これは、今でも同じです。決められた飲み方や量を守らなければ、期待する効果は得られないどころか副作用がでることもあります。
 一方、病院に勤務する薬剤師の役割はこの10-15年で大きく変わりました。つまり、薬局内で薬の調合に専念していて患者さんにはあまり顔が見えなかった薬剤師から、外来やベッドサイドで患者さんに「おくすり」を正しく安全に使って頂くよう説明したり、医師や看護師に患者さんの「おくすり」について専門的な助言をするような薬剤師になってきました。
 このように、色々な医療職が協働して患者さんが良くなるように働くことを「チーム医療」といいます。チーム医療における各職種の役割はアメリカンフットボールに例えられます。つまり、医師はクォーターバックで、そのボールを受け取るレシーバーやランニングバック、時にはガードが薬剤師や看護師であり、患者さんや患者さんのご家族もチームの重要な一員です。大事なことは、それぞれの職種がその専門性を遺憾なく発揮して、治療というボールを患者さんと共にエンドゾーン(ゴール)まで運ぶことです。専門職の誰一人かけても、あるいは技量が乏しければ、チームはボールをエンドゾーンまで運ぶことは難しくなります。
 このようなチーム医療を京大病院は推進しています。私ども薬剤師は、医療チームの一員としてもっともっと活躍し、患者さんから「お薬の先生」と呼ばれるようになりたいと願っています。