研究

 薬剤部研究室は、医学研究科薬剤学分野、薬学研究科医療薬剤学分野、薬学研究科臨床薬学教育分野から成ります。当研究室の目標は、効率的で安心かつ質の高い医療に貢献するため、医薬品適正使用や薬剤業務の科学的基盤を構築することにあります。我々はこれまで、薬物の体内動態は医薬品の有効性・安全性と密接に関連すると考え、薬物動態制御因子である薬物トランスポータに焦点を当てた基礎研究及び臨床研究を展開してきました。また最近では、抗がん剤による副作用発現メカニズムの解明とそれに基づく臨床応用を目指し研究を進めています。以下に、現在遂行している主な研究課題を概説します。

1)痛み・しびれの発生とその慢性化機構の解明
2)抗がん剤による副作用の発現機序解明とその予防・治療法確立に向けたリバーストランスレーショナルリサーチ
3)薬物動態に基づく効果・副作用発現機構に関する基礎・臨床研究
4)パーキンソン病発症機構の解明と新規治療法の探索
5)薬効・副作用の発現を予測するバイオマーカーに関する研究
6)医薬品適正使用および薬剤師業務評価に関する研究
7)研究室アルバム

1)痛み・しびれの発生とその慢性化機構の解明
 痛みは本来、生体警告系として重要な感覚ですが、現在の鎮痛薬に抵抗性を示し、長期間持続する慢性痛や難治化する痛みが存在します。その多くは患者のQOLを下げる不要な痛みで、これらは積極的に治療すべきと考えられます。一方、しびれは正座の直後など誰もが経験する感覚ですが、異常知覚などを伴った病的なしびれは治療の対象となります。しかし、これらの病態には未だ不明な点が多く、治療薬も完全ではありません。我々は、痛みやしびれがどのように発生し、また、慢性化・難治化するのか、それらの機序を解明しようと試みています。特に、感覚神経に発現する侵害受容器(多くはTRPチャネル)による痛み・しびれの発生やその変調、中枢神経と免疫系細胞との相互作用による神経炎症応答に着目し研究を進めています。

2)抗がん剤による副作用の発現機序解明とその予防・治療法確立に向けたリバーストランスレーショナルリサーチ
 がん化学療法における抗がん剤の使用により、様々な副作用が高頻度に出現しますが、十分な対応策が確立されておらず臨床現場では切実な問題となっています。我々は、このような抗がん剤治療の用量規定因子ともなる副作用の発現機序を分子/神経レベルで研究し、予防・治療法を確立する、いわゆるリバーストランスレーショナルリサーチを目指しています。具体的には、シスプラチンによる腎毒性、EGFR阻害薬(ゲフィチニブ、エルロチニブ)による間質性肺炎、タキサン系、ビンカアルカロイド系、白金製剤、プロテアソーム阻害薬による末梢神経障害、ドキソルビシンや経口分子標的薬(スニチニブ、ソラフェニブ、レゴラフェニブ)などで認められる手足症候群について、培養細胞および動物モデルを用いて検討しています。

3)薬物動態に基づく効果・副作用発現機構に関する基礎・臨床研究
 薬物の体内動態は、吸収・分布・代謝・排泄の4つの過程からなり、薬物トランスポータなどの薬物動態関連因子によって制御されています。我々は、薬物の効果・副作用発現機構に関する臨床研究および基礎研究を行っています。白金系抗がん薬シススプラチンや糖尿病治療薬メトホルミンの効果・副作用発現は有機カチオントランスポータの基質認識特性や組織分布により規定されていることを明らかにしてきました。さらに、新規リボフラビントランスポータRFVTを同定し、その変異が希少疾患の原因となることを国際共同研究で報告しました。薬物動態研究に加えて、希少疾患の発症機構や治療薬の開発にも取り組んでいます。

4)パーキンソン病発症機構の解明と新規治療法の探索
 パーキンソン病は振戦、固縮、無動などの運動症状を伴う神経変性疾患です。様々な治療薬が開発されていますが、根本的な治療法が存在しません。そこで当研究室ではパーキンソン病発症機構の解明、そして新規作用機序に基づいたパーキンソン病治療薬の探索に焦点を当て研究を行っています。最近では、抗てんかん薬ゾニサミドやオキシカム系NSAIDsが、パーキンソン病モデルにおける細胞死を抑制することも見出しており、現在はこれらの分子も含めて研究を行っています。

5)薬効・副作用の発現を予測するバイオマーカーに関する研究
 移植医療に必須の免疫抑制剤タクロリムスやシクロスポリンは、個体間・個体内変動が大きいため、投与設計の難しい薬物として知られています。我々は、これら免疫抑制剤の薬効・薬物動態関連因子の遺伝子解析、生化学的解析、母集団薬物動態解析を通して、個別化免疫抑制療法の開発を進めています。このような研究により得られた成果は、現在生体肝移植後のタクロリムス免疫抑制療法に活用されています。また近年では、薬物治療に伴う腎障害発現を予測できるバイオマーカーの探索にも注力しています。

6)医薬品適正使用および薬剤師業務評価に関する研究
 薬剤師業務においても、様々な薬学的な疑問点の解決や新たな薬剤師の取り組みに関する客観的評価を目的に、疫学的な解析が必要となる。また、それらの結果に基づいて、前向き介入研究にも発展することもある。薬剤師が主体となり教員もしくは学生が協働して、これらの研究にも取り組んでいる。また、これらの成果を情報発信することが重要であることから、論文発表もしくは学会発表も積極的に行っている。


図1.医薬品の体内動態と薬効・毒性に関する基礎・臨床研究


図2.抗がん剤の副作用に関するリバーストランスレーショナルリサーチ


7)研究室アルバム

研究室アルバムはこちらをクリック(作成中)